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『老いる家 崩れる街 住宅過剰社会の末路 』(野澤千絵、講談社現代新書)

 

老いる家 崩れる街 住宅過剰社会の末路 (講談社現代新書)

老いる家 崩れる街 住宅過剰社会の末路 (講談社現代新書)

 

 

まとめ

都市計画の規制緩和を批判し、住宅過剰社会に警鐘を鳴らす。読み落としてはいけないのは、本書は都市計画にかかる政治・行政への警鐘であるともに、将来世代へのツケを無視して新築住宅を追い求め続ける我々日本人1人1人への警鐘でもあるという点だ。

住宅過剰社会

2013年度に全国で約820万戸ある空き家が、20年後には約2150万戸になるという。そんな状況下でも、毎年100万戸近い新築住宅が供給されている。本書はそのメカニズムを解剖するとともに、住宅過剰社会に警鐘を鳴らす。

継続する郊外のスプロール化

本書を読んで特に驚きだったのが、郊外住宅のスプロール化(無秩序な拡大)が21世紀に入ってからも進行しているということだ。全国の新築住宅のうち建替え住宅はわずか1割に過ぎず、9割が新たに開発された宅地に建てられた住宅だという。その背景として、2000年以降の都市計画法の改正、規制緩和によって、本来は市街化を促進すべきとはされていない区域(市街化調整区域ないし非線引き区域)において、新規の開発が容易になっていることが挙げられる。既成市街地よりも、低コストで低規制なエリアに住宅が建設されていく。こうした住宅はまさに「使い捨て」の住宅で、将来転売できる見込みは薄い。

開発の代償は、道路や上下水道等の行政サービスのコストへと転化していくが、土地所有者、ディベロッパー、消費者にとって「既得権益」と化した規制緩和を、再び強化することは容易ではない。
これらの状況に対して、
・実効性のある住宅の誘致計画、総量コントロール
・現存住宅のリノベーション施策
・開発住宅へのコストオン
・意識改革
などが提言されている。